電気工事の現場で出逢ったのは、思いがけない“小さな命”でした。
約100㎏のケーブルの隙間から見つかったのは、手のひらに乗るほど小さな子猫たち。
つぶされればひとたまりもないサイズでした。
そこから始まったのが、今では看板猫としてお客さまを迎えてくれる「シャア」と「セイラ」の物語です。
第1話では、現場での発見から我が家の一員になるまでをお届けします。
某発電所の現場にて
数年前、関東のある某発電所に仮設の幹線工事で出かけることになりました。
朝礼や安全確認を済ませ、さっそく荷台に積んだCVTケーブル（100スケア、しかも数百メートル！）を引っ張り出して人力で幹線を敷設していきます。
電線って実は重いんです。
何とか人力で動かせる状態の束で、約30ｍ重さ約100㎏もあるんです。
それが荷台に数100ｍ載っていたわけですから、荷台の状況がなんとなくお分かりになると思います。
足りなくなった電線を取りに行った後輩が突然、荷台の上で悲鳴をあげました。
「ね、ネズミ！！」
みんなで覗き込むと、そこにいたのは――なんと小さなクロネコの赤ちゃん。
しかも一匹ではなく二匹！
手のひらサイズの命
電線に囲まれていたその子たちは、本当に小さく、まさに“ネズミサイズ”。
両手で包むとすっぽり収まってしまうほどで、怯えて動けないような状態でした。
「よく無事だったな…」
そう思わずにはいられませんでした。
だって、荷台には100kg近い電線の束を積んでいたのです。
積むときも降ろすときも「ドン！」と大きな音がするような重量物。
そんな環境の中、いつつぶされてもおかしくない状況で、声を潜めひたすら耐えていたのです。
この時に、「ああこの子たちはうちで飼うようだな」と僕は直感しました。
さらに3匹の発見
2匹を段ボールに入れて休憩室に避難させ、作業を続けていました。
午後の仕事も無事に終えて、余った電線を片付け始めたその時でした。
「まだいる！！」
なんとさらに3匹のクロネコを保護。
合計5匹、すべて兄弟姉妹と思われる小さな命が、電線の隙間で震えていたのです。
仕事を終えても、当然そのまま発電所に残して帰るわけにはいきません。
その日から、僕が5匹の子猫を預かることになりました。
とはいえ、5匹すべてを飼うのは現実的に難しい…。
そこで里親探しを始め、幸運なことに3匹は温かい家庭に迎え入れてもらえることになりました。
でも、最後まで残ったのが――オスの1匹とメスの1匹。
「シャア」と「セイラ」
そのオスの子は、とにかく気が強く、人を見ると「シャーッ！」と威嚇を繰り返す子でした。
僕は直感的に思いました。
「この子は、もらわれないだろうな。」
そして案の定、最後まで残ったのです。
もう1匹、唯一のメスも臆病だからか同じく残り、一緒に我が家の一員になりました。
名前はもちろん――威嚇するオスは「シャア君」。
そして、その妹は「セイラちゃん」。
ガンダムを知っている人なら、思わずニヤッとする組み合わせですよね。
人に慣れない子猫との闘い
うちで飼うことになったものの、2匹とも人慣れはゼロ。
とくにシャア君は、ケージの隅で毛を逆立て、必死に妹を守るように「シャー！シャー！」と声を張り上げていました。
その姿を見ながら思いました。
きっとシャアは臆病な妹を守ろうと必死だったのだ、と。
妻も「少しずつ距離を縮めていこうね」と言ってくれました。
実は妻が運営している音楽教室の名前は こねこのて音楽教室。
昔、やはり保護して大切にしていた白猫「はなちゃん」から名付けた教室です。
（名前の由来についてはここをクリック！）
そんな背景もあり、シャアとセイラは自然と「我が家の猫」として居場所を得ていきました。
看板猫への第一歩
今では、うちのロゴに猫のシルエットを入れるほど、「猫」はシンボル的存在。
不思議と猫好きなお客さんが多いのも、その影響かもしれません。
しかし、ここまでの道のりは決して平坦ではなく――次回は、現場で出逢った小さな命 ― 看板猫『シャア』と『セイラ』の物語（第2話）「初めての病院で大暴れ！」のエピソードをお届けします。
先生のひと言に僕自身も驚かされた、あの日の出来事です。
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