現場で出逢った小さな命 ― 看板猫「シャア」と「セイラ」の物語(第5話)

でんきのひがき屋ブログ

会いたくても会えない日々と、小さな奇跡


2022年9月4日。
体がだるくて熱を測ると、39度を超えていました。
検査の結果は「陽性」。
ついに、僕も新型コロナウイルスに感染してしまったのです。

妻と一緒に暮らしているとはいえ、家庭内感染を防ぐためには距離を取らなくてはいけません。
その日から僕は、玄関から最も遠いリビングにこもることになりました。
食事はドアの外に置いてもらい、誰にも会わず、声もかけない。
共通のトイレは手洗い、マスク、アルコール消毒などの厳重装備で挑みました。
同じ家にいるのに、まるで別々の世界で暮らしているようでした。


家の中で会えないという現実

当時、動物も感染を媒介するかもしれないという話がありました。
猫たちに何かあっては困る。
そう思うと、「ほんの少しでも触れる」ことすらできませんでした。

リビングのドアを閉めたその向こうには、いつもの2匹がいる。
そう思うだけで胸が痛みました。

「おはよう」も「おやすみ」も言えない。
ただ静かな部屋で、テレビの音と自分の咳だけが響く。
窓の外はまだまだ灼熱の真夏日、僕の部屋だけは時間が止まったようでした。


ドアの向こうの小さな声

3日目の夜。
味覚も嗅覚もおかしくなっていたころです。
いつものように薬を飲んで横になろうとしたその時、ドアの向こうから「ニャッ」と短い鳴き声が聞こえました。

——シャーピンだ。

たった一声。
それだけなのに、涙が出そうになりました。

「ごめんな、もうちょっと待っててな」
小さくつぶやいても、もちろん返事はありません。
でも、どこかで聞いてくれているような気がしました。


妻から届いた「今日の2匹」

妻とは、毎日ビデオ通話をしてくれました。
「今日のシャーピン」「オジョーはここで寝てるよ」
そんなメッセージと一緒に届く、2匹の日常の動き。

スマホの画面越しに見る猫たちは、
少し大きくなって、毛並みもつやつやしていて、
まるで「大丈夫、ちゃんと待ってるよ」と言ってくれているようでした。

その電話が、隔離生活の支えになりました。
会えないという孤独の中に、確かに繋がりを感じた瞬間でした。


11日目の朝 ― 再会の瞬間

体調も落ち着き、ついに隔離解除の日。
リビングのドア越しに妻が「おかえりなさい」と声をかけてくれました。
妻は感染せず。
隔離生活大成功です。
ドアノブを握る手が少し震えました。

静かに扉を開けると、廊下の向こうに黒い影が2つ。

「ニャア!」

次の瞬間、シャーピンが全速力で走ってきて、僕の足に飛びついてきました。
その勢いで少しよろめいたほどです。
オジョーも少し遅れて顔を出し、そっと足元にすり寄ってきました。

11日ぶりに感じる温もり。
その柔らかな体温が、心の奥まで溶かしていくようでした。


変わらない存在、少し変わった日常

2匹は僕の膝の上を取り合うようにして甘えてきます。
その姿を見て、思わず笑ってしまいました。

「忘れてなかったんだな」

まるで「おかえり」を言ってくれているようで、
その小さな仕草に、言葉にならないほどの嬉しさが込み上げました。

同じ家の中でも、ドア1枚で隔てられた世界。
会えない時間の中で、改めて存在の大きさを感じました。

あの日から、僕はこれまで以上に
「この子たちのそばで生きていきたい」と強く思うようになった気がします。


会えない時間が教えてくれたこと

人も猫も、言葉ではなく“気配”で繋がっている。
たとえ姿が見えなくても、確かにそこにいてくれる。

孤独の中で感じたそのぬくもりこそ、生き物と暮らすということの本質なのかもしれません。

「会えない時間が、絆を深くする」
そんな言葉が、あの日ほど心に響いたことはありません。


📖 次回予告:

“シャーピン、生後6ヶ月。初めての去勢手術へ。”
成長の証と、少しの不安。
家族みんなで迎える新しいステップをお届けします。


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